私の昔からの友人にも、やはり同じような境遇になった人がいる。彼も周りから「できるやつ」といわれていた。東大を出て某一流銀行に入行し、海外の支店長や本部の部長を歴任した、絵に描いたようなエリートだった。ところが、この銀行も合併してメガバンクになった結果、彼も役員になり損ねたのである。どこの銀行にも月に一回発行される行内報があるが、彼の勤めていた銀行の行内報にはその月に退職する者が一行コメントを書く欄がある。
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彼は役員になれなかったのがよっぽど腹に据えかねたらしく、なんと、「こんな銀行に勤めてバカをみた」と書き残したのである。ふつうこんな捨て台詞を書く退職者はいないから、当時は行内だけではなく、外部でも大いに話題を呼んだものだ。私もわざわざ一部取り寄せてみて読んだが、ほんとうにそのとおり書いてあったので、びっくりした。私のもとに相談しにきた彼も、私の友人の彼も、同じようなことを私に語ったから驚いた。それはこういうことである。「なまじ同期の出世頭にならなかったら、オレもきっと四十歳くらいで見切りをつけたのだろうけれど、役員の芽があると思ったから、ここまで引きずってしまった」ちなみに、行内報に「バカをみた」と書きつけた友人は、幸いにもお坊ちゃんの生まれだったため、お祖父さんが創業した会社に移り、いまは代表取締役の一人に名を連ねている。