日本は、品質管理の統計的手法を、敗戦後にアメリカから学んで各企業がとり入れるようになり、やがて日本的QCに仕上げました。その特徴は、班などの小集団を単位に「QCサークル」を作り、現場でのすべての作業について従業員自身が改善案を提案しあい、生産性の向上をはかるという方式です。ハルバースタムはこれを、「仕事をおもしろくし、労働者に仲間意識をあたえるため」に組織されたものであり「ディスカッションの場であり、品質を改良すると同時に、仕事の非人間的部分を取り除き職場の人間関係をよくするための試み」だと評価しています。製造現場を中心とするQCサークルづくりは1962年から始まり、やがて研究、開発、設計、販売などのすべての部門、経営者、関連下請け企業などもふくめたTQCへと広がっていきました。また、大量生産をする製造業以外の業種にも、QC、TQCが広がって、建設、流通、金融、運輸などの産業部門で実施されています。しかし他方では提案制度の形骸化を指摘する声、小集団の成績評価方式への疑問なども、現場労働者にはあります。
GNPは世界第2位ですが、住宅や社会資本はあいかわらずお粗末です。巨大な資本輸出国になりましたが、国内の金融取引ルールは不透明で、銀行や証券会社の経営内容も満足に公開されていません。ODAは世界一ですが、援助される側からは「日本の態度は不遜だ」と批判されることもあります。ハイテクの国といわれながら、研究者の待遇は欧米諸国よりも劣悪で、大学の研究施設は老朽化したままです。大きくなった日本経済には、海外の期待も膨らみます。輸出ばかりせずに、海外に工場をつくってはしい、技術を移転してもらいたい、と途上国からは頼まれます。貧しい国へもっと援助しなさい、地球環境を守るためにおカネも、人も出しなさい、と先進国からは突き上げられています。それなのに、日本は世界の期待に応えられず、試行錯誤を続けています。「日本にはそんな力はない」とある人が言えば、「おカネだけ出させられて、発言権が高まらないのはどういうわけか」と憤慨している人もいます。海外からほめられたり、叩かれたりしているうちに、日本人は自分の姿も役割もよくわからなくなってしまっているかのようです。
インドもまた同じ悩みを抱えている。高等教育を受けてから移住する人が多く、海外で働く約220万人のうち53%が高学歴の人々だ。インドには優れたIT技術者を多数輩出してきた実績があり、アメリカをはじめ世界各国から需要がある。27か国を対象にした国際労働人口調査によると、人材の調達国としてもっとも人気があるのは中国で、2位がアメリカ、インドは3位にランクされている。技術者にとっては、インド国内で就労するよりもはるかに待遇がよいため、どんどん海外に出ていく。その結果、おもに行政、金融、保険、不動産、製造、サービスといった分野での人材不足が懸念されており、いまのところ一度国内を出た人材をふたたび呼びもどす手立てはない。数万人の看護職が足りないといわれる日本も、その深刻な問題を解消するために、外国から看護師や介護福祉士の受け入れを始めている。